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― タイサッカーリーグ観戦紀行 2015 ― Vol.5 タイ南部 パンガー県

コラム

column
2015/07/20

 [ Vol.5 タイ南部 パンガー県 ]

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 クラビ市内のバスターミナルから約2時間で到着したパンガー市内のバスターミナルは、昨日のクラビでの快晴が嘘のように雨模様だった。その雨の影響か人もまばらでどこか寂しげだが、バスターミナルに降り立って周りを見渡すと、雨とモヤで霞んだ山々が神秘的な雰囲気でそびえ立っている。ラオスの「バンビエン」やベトナムの「ハロン」の様に、水墨画に描かれているような、どこか東アジアを思わせる景観であり、何となく懐かしい気分になった。パンガー県内も見どころが沢山あるのだが、ほとんどの観光客が、ホテルなど施設の整った隣のプーケット県やクラビ県からアクセスすることから、陸路で移動する旅行者もパンガー市内は素通りする傾向にあるため、宿泊施設やレストランなどは非常に少ない。

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 パンガー県は、西にインドネシア沖大地震の津波で甚大な被害を受けたビーチリゾート「カオラック」があり、海洋国立公園として指定されているシミラン諸島やスリン諸島など、世界有数のダイビングポイントへ向かうダイバーのアクセス拠点となっている。南には同じく海洋国立公園として指定されている「パンガー湾」があり、湾内には大小約160の島々や岩礁が点在している。なかでも、映画「007 黄金銃を持つ男」のロケ地となったジェームス・ボンド山(Khao Ping Kan カオ・ピンガン)、ムスリムが生活するヤオノーイ島、同じくムスリムの人々が海上生活をしているパンイー島などが有名だ。

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 翌日も朝から雨が降っていたが、バスターミナルにあるツアーデスクで「パンガー湾周遊ツアー」を申し込んだ。ツアーは定員10名程の小型船でパンガー湾内を周遊するのだが、小型船で船底も浅い為、スピードが出るとなかなか迫力がある。水しぶきもガンガン掛かるので雨ガッパは必需品だ。数キロと続くマングローブの森を抜け、点在する数々の島を横目に見ながらジェームス・ボンド山(山が浸食で崩れてしまった為、現在のような岩の形になっている)へ到着した。007の映画は記憶にないが、海面に釘を刺したように立つ岩の景観はやはり素晴らしい。もし乾季に来ていればもっと素晴らしい景観なのだろう。

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次に訪れたのは、ムスリムの人々が海上生活をする「パンイー島(Kho Panyee)」だ。ここは切り立った崖の足元から、海上に延びるように高床式で建てられた彼らの”街”を散策することができる。街の中に入ると、幅1m程のメインの小路があり、その横にまた無数の小路が続いている。その小路に民家や商店が無数に存在し、小路では子供達が走りまわり、大人達は商店で買い物をしたり談笑したりと、街を散策しながら彼らの普段の生活を垣間見る事が出来る。また、このパンイー島はあるショートフィルムで有名になった島でもある。「パンイーFC / Panyee FC」というショートフィルムは日本でも上映されているのだが、この陸地の無いパンイー島の子供(人々)たちが海上に廃材などを持ち寄ってサッカー場を作り、その子供たちが初出場した県大会で準決勝まで進出するという快挙を成し遂げ、その後、パンイーFCはタイ南部のユース大会で優勝するほどの強豪にまで上り詰めた。という実話をもとにした内容になっている。

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 パンガー県にはDivision-2南部地区に所属するパンガーFCというクラブがある。パンガー市内からはバイクタクシーなどを使って行く事になるが、四方を石灰岩でできた山々に囲まれたスタジアムは独特の雰囲気を持っており、メインスタンドに座ってみると、バックスタンド後方にそびえる山々が圧倒的な存在感でピッチを見下ろしている様は圧巻だ。今回の滞在期間中は残念ながら試合は行われていなかったが、数年前に観戦した時は、リーグ最終節ということもあって大勢のサポーターでスタンドは埋め尽くされていた。

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 パンガー湾に点在する島々が、雨とモヤで霞んで神秘的な雰囲気を醸し出していた景観や、何キロも続くマングローブの森、四方を山々に囲まれたスタジアムなど、自然の持つ圧倒的な存在感や神秘的な雰囲気を持つパンガー県。隣のプーケット県やクラビー県に比べるとマイナーな県ではあるが、メジャーな観光地ではない(カオラックは除く)からこそ味わえるものもある。それがパンガー県の魅力の一つかもしれない。



 


                                    【写真 / 文:Samurai x TPL】


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